翻訳 平成26年6月

花子が a bosom friend を「腹心の友」と訳したのは名訳だと思う。bosomは胸のことだから。

昔、ドアーズの対訳を柳瀬尚紀がしていたのには驚いた。彼は邦訳不可能だと言われていたジョイスの「フィネガンズウェイク」を完訳した翻訳家だ。

SF作家で翻訳家で音楽評論家の鏡明、初期は岡田英明名義で仕事をしていた。彼が対訳したテレヴィジョンの「glory」の冒頭

I was out stumbling in the rain staring at your lips so red.

「よろめき出ると、雨。なんて赤いあなたの唇」

今でも忘れられない名訳。
オマケ
翻訳は黒子であって、舞台の主役ではない。
でも翻訳家の知識や経験や感受性が出なくてはならない。創作であって創作ではない。
「芥川に倣って、僕はこういいたい気持ちになります。最大の奇蹟は日本語である、少なくとも日本語は天才である、と言い切れる確信はあります」 柳瀬尚紀
 

 回顧を兼ねた書評
 僕の初海外旅行は26歳の時のインドだった。
 当時往復チケットは年末料金だったので30万した(泣)。
 行く前は椎名誠の「わしもインドで考えた」を熟読。
 インドでは尻の毛まで抜かれるほどぼったくられ、下痢と発熱で散々だったけど、
 それからはリーマンパッカーとして主にアジアをふらふら。
 アフリカは遠すぎて行けなかった。新婚旅行もバックパックでバンコクと香港へ。
 香港では雑居房のチョンキンマンションで二泊し、妻はぐったりしていた。
 バンコクでは安宿と高級ホテルと泊まり歩き、マリオットのプールで
 溺死しそうになったのは今ではいい思い出だ(嘘)。
 旅も好きだが、旅行記も好きだ。
 この本は主にアフリカ旅行のエッセイだが、面白い。
 何よりも文章がうまい。
 奥さんとのなりそめを綴った「追いかけてバルセロナ」なんか疾走感があり、
 一気に読め、感動的でさえある。
 朝の通勤の地下鉄で読んでたけど、日本にいながら気持ちはバックパッカー。
 旅の本もいいけど、また出かけたいなあ。