#35 NY地下鉄編 (リターンズ)

#35 NY地下鉄編 (リターンズ)
2012-10-01 | Weblog
#35 NY地下鉄編

at 2004 01/23 21:36 編集

 地下鉄は楽しい。メタリックでアーバンである地下鉄は輸送手段に徹していて媚びないところがクールでもある。私は地下鉄が大好きだ。地下鉄のある都市に行けば必ず乗る。用がなくてもとにかく乗る。今までいろいろな国で乗った。香港ではなぜか下駄履きで乗った。肩を叩かれたので振り向くと、若い男が私の下半身を無言で指差している。見るとズボンのジッパーが全開していて恥ずかしい思いをした。ソウルではおじいさんに声を掛けられた。私が日本人だと分かると日本語で身の上話を始め、それが延々と続いて閉口した(今思い出したけど、何で地下鉄の便所内にコンドームの販売機があるとですか?)。ロンドンのチューブでは騒いでいるガキに注意したら、「asshole !」と言われた。ロサンゼルスの地下鉄には改札がない。無賃乗車していたら、たまたま検札に遭い、必死で英語の分からないふりをした。このように輝かしき栄光の地下鉄人生の王道を歩んできた私のことを、地下鉄の達人と呼んでくれても一向に差し支えない。そして世界中の地下鉄の中で唯一24時間運行なのがニューヨークである。いわば、地下鉄の中の地下鉄、キング・オブ・地下鉄といってよいだろう。地下鉄を制するものは世界を制す(ホントか?)。
 ニューヨークの地下鉄は何といっても殺伐としているところに趣がある。ホームには電話が何台も架設されている。これらは犯罪時の緊急用だろう。便所は犯罪防止のためにその多くが閉鎖されている。タイムズ・スクエアの駅なんかムッとアンモニアの臭いが鼻を突く場所もある。我慢できずに立ちションしている輩がいるらしい。車両は落書きされても消すことのできるニュータイプが日本から輸入され、名物だったジャクソン・ポロックのようなアクション・ペインティングは見ることができなくなったので残念だ。ニューヨークは人種のるつぼ(メルティング・ポット)ではなく、人種のサラダボウルだと言われて久しいが、ダウンタウンからアップタウン行きの地下鉄に乗ってみるとそれがよく分かる。ウォール・ストリートでは白人が多く、チャイナタウンのあるキャナル・ストリートに停まると中国系がどっと乗り込んでくる。ミッドタウンになると再び白人が多くなり、ハーレムに入ると黒人が多くなる。各人種が融合しているわけではなく、中国人街、韓国人街、イタリア人街、インド人街、ギリシャ人街等と住み分けができているのだ。そういえば夜、間違えて急行に乗ってしまい、慌てて降りた所がサウス・ブロンクスのサイプレスという駅だった。ホームには誰もいない。乗り換えるために地上に出ると、周りにあるビルというビルが焼けただれていた。あん時はビビったな。何しろ、火災保険をせしめるために放火する奴がいるらしいのだ。興味ある方は落合信彦の「アメリカの狂気と悲劇」をお読み下さい。 
 地下鉄は24時間営業とはいっても、夜の9時過ぎてから乗る人はめったにいまい。日中でも路線によってはホームに人がいなくなる駅もある。ホームには「Off Hour Waiting Area」が設けられていて、ラッシュ時以外はそこで電車を待つ。何てことはないのだが、ホームの中ほどにあって、乗客もそこに集まるから少しは安全だ。夜になると警官が乗車してくるので、乗客は彼等の乗っている車両に乗る。駅で乗客のほとんどが降りてしまい、警官もおらず2、3人だけが車両に残っている場合なんかとても緊張する。そんな時に限って、向かいに座っている男がじっとこちらを見つめているような気がする。私はおもむろにポケットからガムを取り出し、それをくちゃくちゃと噛みながら、俺は生っ粋のニューヨーカーなんだぜというポーズをとる。ついでに指の関節をポキポキと鳴らし、俺はカラテのブラックベルトだぜ、俺のパンチはピストルの弾丸より早いぜと威嚇(のつもり)をする。時おり軽くシャドーをしながら、最近ケンカしてねえなあ、体がうずいてしょうがねえぜという雰囲気を目一杯表現する。そいつが次の駅で降りてしまうと、どっと疲れる。我ながらバカみたいだ。もう何年も前のことになるけど、ある雑誌が地下鉄内で身の危険を感じた時の対処策は? というアンケートをニューヨークに住む女性にしたことがある。第一位は「鼻クソをほじって、アホのふりをする」(藤山寛美?)だった。これは効果があるかもしれん。
 犯罪が多発する地下鉄ではあるが、面白いのは何といっても乗客を観察することと、ストリートミュージシャンだ。ロック、ジャズ、ポップス、ダンス、毎日いろいろなパフォーマンスが楽しめる。黄昏どきに構内のどこからかサックスの音が聞こえてくると、ニューヨークだなあと思う。ある時、黒人女性が改札の前に座ってボンゴを叩き始めた。人が徐々に集まってくる。興が乗り、観客の黒人女性が手をひらひらさせて踊り、ヒスパニックの女が腰をくねらせて踊る。他の者はリズムを取り、手拍子をする。30分もの熱演が終わると、いっせいに拍手が起きた。駆け寄って抱きつく人もいた。そのあと電車に乗っていたら、黒人の男が乗り込んできた。小さな紙切れを口に当て、息を吹きかけて音を出している。メロディーはバットマンのテーマだ。でも、誰も「またか」というような顔をして見ようともしない。続いてコメディアンの物真似を披露したが...................し~ん。ううっ、寒い。寒すぎる。おひねりをもらおうと通路を回るが、もちろん無視されていた。思わず、「あほんだらっ! お客さまからゼニをいただこうと思うんやったら、芸を磨かんかいっ!」と桂春団次風に心の中で罵倒する私でした。
 地下鉄はどこまで行っても、何回乗り換えても同一料金だ。改札はトークンを入れ、ターンスタイルという金属のバーを押して入場する。そういえば、ビリー・ジョエルの「ニューヨーク物語」というアルバムは原題が「Turnstiles」だったな。ある日、いつものように地下鉄に乗ろうと、トークン売場に1ドルを出した。窓口のおばちゃんは「15セント足りないよ」と言う。なにいっ、市の職員までがボる気かっ、さすがニューヨークだ、とわけの分からん感心をして身構えると、おばちゃんは無言で背後の壁を指差した。壁に貼ってあるポスターには「地下鉄料金、本日から値上げ。1.15ドル」と書いてあった。

元(ハジメ)管理人の感想文と皆様への伝達事項

 アメリカ・ニューヨーク旅行記です。
 私の場合、地下鉄に限っては目的地があるから利用するといった考えです。言い換えると、地下鉄に乗車して楽しみたいから乗るといった考えではありません。平成十年代に北海道に行きました。北海道札幌市の地下鉄で驚いたのは切符の裏表を逆にして自動改札口に切符を入れると出入りが行えなかったんです。他にも平成24年の夏に札幌市南区真駒内駅の出入り口近辺で熊が出没したので騒ぎになったといった報道もございました。
 ニューヨーク市の地下鉄の料金は過去のお話です。現在(平成24年)は、値上がりしていて片道$2以上です。ニューヨークの地下鉄の料金は現在(平成27年2月時点)では、$2.50($1を¥120で計算して¥300)だそうです。余談かもしれませんが、大阪市の地下鉄の初乗り運賃(一区間¥180)のおよそ2倍です。為替相場が今後、どうなるかは不明ですが、駅の移動によっては同じ位の金額になります。13km以上から19km迄なら¥320。19km以上で¥370です。
 皆様、海外旅行記では支払い方法が分からずに右往左往するお話がよくありますよね?アメリカでは英語が喋れないとどうしようもありません。
 近年のように携帯電話が普及する前の海外旅行記なので私はNYC(ニューヨーク市)の地下鉄に乗車した事はありませんが公衆電話が日本のようにほとんど撤去されているかもしれません。過去にも伝えていますがこの海外旅行記は平成初期から平成十年代の海外旅行記です。
日本では考えられないことですが、路線毎に人種が分けられているのもニューヨーク市の地下鉄らしいのかもれません。ちなみに、サイプレスは檜(ヒノキ)です。第三者であれば、サイプレスアベニュー駅だから檜アベニュー駅と日本では紹介されるかもしれません。
 日本国内であっても乗降客が多い駅とそうでない駅とで大別されているのが現状ですね。休日に電車に乗って乗降客が少ない駅で下車する時に下車する人が少ない経験は誰もが一度は体験したことがあるとは思います。大阪であれば午前中であっても酔っ払いのおじさんが「駅の出入り口が一箇所やから難儀する。」となぜか急に質問されたことがありました。その駅は端に一箇所だけ出入り口がある駅でした。
ニューヨークの地下鉄は確かに治安の悪化の影響もあるが一方で少しは楽しめるようになっているようです。
 私は外国人と地下鉄の電車内で会話をしていたら自動車保険を支払わずに安全の目的地に到着が行える点が良いと話していました。 鉄道嫌いの人にとっては「問題があってもいつも自動車が好き。」と考えているかもしれませんね。
 地下鉄の料金が一種類の点については日本では一日乗車券を連想しますね。
 ドリアン長野は本当に極真空手の黒帯保持者でとても強いです。並ではありません。
 日本であれば地下鉄(大阪市交通局堺筋線)を走る阪急の車両の中に内臓されている薄型テレビが広告を放映しているかもしれないから並のストリートミュージシャンの出番はありませんね。
 次回のドリアン長野の海外旅行記にご期待下さい。
余談 真夏に短パンを履いて外出する人は多いですがチャックが無い化学繊維のナイロンで作られた半ズボンで外出するのは別に問題が無いと思えてくるのは上記の海外旅行記を読まれたら賛同してもらえると思います。(笑)

 

 回顧を兼ねた書評
 僕の初海外旅行は26歳の時のインドだった。
 当時往復チケットは年末料金だったので30万した(泣)。
 行く前は椎名誠の「わしもインドで考えた」を熟読。
 インドでは尻の毛まで抜かれるほどぼったくられ、下痢と発熱で散々だったけど、
 それからはリーマンパッカーとして主にアジアをふらふら。
 アフリカは遠すぎて行けなかった。新婚旅行もバックパックでバンコクと香港へ。
 香港では雑居房のチョンキンマンションで二泊し、妻はぐったりしていた。
 バンコクでは安宿と高級ホテルと泊まり歩き、マリオットのプールで
 溺死しそうになったのは今ではいい思い出だ(嘘)。
 旅も好きだが、旅行記も好きだ。
 この本は主にアフリカ旅行のエッセイだが、面白い。
 何よりも文章がうまい。
 奥さんとのなりそめを綴った「追いかけてバルセロナ」なんか疾走感があり、
 一気に読め、感動的でさえある。
 朝の通勤の地下鉄で読んでたけど、日本にいながら気持ちはバックパッカー。
 旅の本もいいけど、また出かけたいなあ。