マラソン本 #2
日本振興銀行の経営破綻による混乱のさなか、代表執行役社長となった作家は、ふとしたきっかけで走り始める。五十代半ばを過ぎ、肉体は典型的メタボ、ストレス続きで精神的にもどん底だったが、走ることであらゆることが変わって行った。仲間との早朝練習、散々だった初マラソンから念願のサブフォー(4時間を切るタイム)達成、そしてさらなる自分への挑戦――震災を挟んで二年、マラソンによる予想外の変化をつづる感動的なランニング・エッセイ。
散々だった初フルマラソンというのはゴール直後、トイレに駆け込み、嘔吐と下痢で半死半生、誘ってくれた人に「なんでお金払ってこんな苦しい思いをしないといけないんですか」と恨み節、もう二度とマラソンなんかしないと決心したのに、翌日には走っていた。なんで?と思うだろうが、この感覚はランニングしている人なら首肯するだろう。
なにより感動的なのは、経営破綻の処理で連日連夜マスコミに追いかけられていた著者が鬱病気味になり、死んで楽になりたい、とまで思いつめ、いつ電車に飛び込んでもおかしくない精神状態だったのに、ランニングを始めて心身ともに健康になっていったことだ。