勢古浩爾 平成29年五月

勢古浩爾という評論家、エッセイストがいる。輸入洋書会社に勤務、並行して文筆活動を行い、定年まで勤め上げる。私は彼の潔い文体が好きだ。例えば
恋愛にいたっては、生涯ひとりの女性を愛し、愛されればそれで十分、合コンのような愚劣なことは絶対にするなと言い切る。
「世界の中で自分より立派な男がたくさんいるのに、自分を選んでくれた、それはもうすごいことではないか。こんな俺のどこがいいのか、と思わないのか」と。
思わず首肯。彼がエッセイの中で神田神保町の「キッチン南海」のカツカレーは日本一であると書いていたので食べに行ったことがある。確かに美味しかった。本好きには周知の事実であろう。
 

 回顧を兼ねた書評
 僕の初海外旅行は26歳の時のインドだった。
 当時往復チケットは年末料金だったので30万した(泣)。
 行く前は椎名誠の「わしもインドで考えた」を熟読。
 インドでは尻の毛まで抜かれるほどぼったくられ、下痢と発熱で散々だったけど、
 それからはリーマンパッカーとして主にアジアをふらふら。
 アフリカは遠すぎて行けなかった。新婚旅行もバックパックでバンコクと香港へ。
 香港では雑居房のチョンキンマンションで二泊し、妻はぐったりしていた。
 バンコクでは安宿と高級ホテルと泊まり歩き、マリオットのプールで
 溺死しそうになったのは今ではいい思い出だ(嘘)。
 旅も好きだが、旅行記も好きだ。
 この本は主にアフリカ旅行のエッセイだが、面白い。
 何よりも文章がうまい。
 奥さんとのなりそめを綴った「追いかけてバルセロナ」なんか疾走感があり、
 一気に読め、感動的でさえある。
 朝の通勤の地下鉄で読んでたけど、日本にいながら気持ちはバックパッカー。
 旅の本もいいけど、また出かけたいなあ。