内田百閒の「ノラや」 平成29年6月

内田百閒の「ノラや」は愛猫のノラが家出をしてしまい、70歳にならんとする百閒先生が身も世もなく嘆き悲しむ随筆だ。
「ノラのことを思うと涙が止まらない」とこの明治生まれの頑固偏屈無愛想で我儘な文豪が毎晩はらはらと涙を流す。ノラと入れ替わりに居ついた野良猫も病死してしまう。私も愛猫家として読んでいて胸を突かれる。
なぜだか「ショーシャンクの空に」の主人公の言葉を思い出す。
Hope is a good thing, maybe the best of things. And no good thing ever dies.(希望ってのはいいものだ。多分この世でいちばんのものだよ。どんなに絶望の中にあったって良いものは決してなくならないんだ)
上を見ると青い空だ。今日も頑張ろう。
 

 回顧を兼ねた書評
 僕の初海外旅行は26歳の時のインドだった。
 当時往復チケットは年末料金だったので30万した(泣)。
 行く前は椎名誠の「わしもインドで考えた」を熟読。
 インドでは尻の毛まで抜かれるほどぼったくられ、下痢と発熱で散々だったけど、
 それからはリーマンパッカーとして主にアジアをふらふら。
 アフリカは遠すぎて行けなかった。新婚旅行もバックパックでバンコクと香港へ。
 香港では雑居房のチョンキンマンションで二泊し、妻はぐったりしていた。
 バンコクでは安宿と高級ホテルと泊まり歩き、マリオットのプールで
 溺死しそうになったのは今ではいい思い出だ(嘘)。
 旅も好きだが、旅行記も好きだ。
 この本は主にアフリカ旅行のエッセイだが、面白い。
 何よりも文章がうまい。
 奥さんとのなりそめを綴った「追いかけてバルセロナ」なんか疾走感があり、
 一気に読め、感動的でさえある。
 朝の通勤の地下鉄で読んでたけど、日本にいながら気持ちはバックパッカー。
 旅の本もいいけど、また出かけたいなあ。


 管理人マーキュリーマークからの伝言
 上記は、ドリアン長野が令和二年に投稿した内容です。
 令和六年にドリアン長野は親子でケアンズ旅行。