中西麻耶は塗装工としての仕事中に5トンの鉄鋼が倒れてきて右足膝下を切断する。軟式テニスでインターハイに出場するほどテニスに打ちこんでいたが、断念。陸上に転向し、北京パラリンピックに出場。次のロンドンパラリンピックのための資金作りのためにある決断をする。しかしそのことで「障害を売り物にしている」と激しいバッシングを受けてしまう。元来中西麻耶は前向き、果敢、怖いもの知らずな性格であったが、やがて摂食障害、過食症、睡眠障害、鬱病、果ては日本国籍を放棄する手前まで彼女を追いつめてしまう。
そして希望の見えた最終章にたどり着き、エピソード。
「わたし、金子さん(スポーツライターである著者)に嘘をついてました」
その告白を聞いて著者は激しい衝撃を受ける。中西麻耶が事故で失ったのは、右足だけではなかった。なぜ、彼女はあれほどひどい鬱になってしまったのか、すべてのことには理由があった。彼女自身がその理由を知ったのが事故の前日だったのだ。
スポーツを愛する人も愛さない人も、この本を手にとって中西麻耶という女性を知って欲しいという強い衝動に今、私は駆られている。