寒くなるとこの本を思い出します。 平成30年2月


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2017年2月2日
何年か前に中谷美紀インド旅行記を読んでいたら、この本に触れていた箇所があり、読んでみた。

言葉を失った。壮絶、とはこのことを言うのだろう。

世界最強のクライマー、山野井泰史と妻、妙子がヒマラヤのギャチュンカンの北壁に挑む。マイナス30度から40度に達する7000メートルの高地でほとんど垂直な北壁で苛酷なビバークを二日間。二日目はわずかなテラスもなく、ロープを二重にしブランコを作り、その上に腰掛け、一夜を明かす。彼らは酸素ボンベも持たない。しかも雪崩が何度も直撃し、二人とも目が見えない。

「肉体的にはかつてないほど追い込まれている。極限という言葉を簡単に使うことは許されないが、その近くまでは追い込まれているだろう。もうひとつ不測の事態に見舞われれば、最後の支えも切れてしまうかもしれない。
ー絶対に生きて帰る。
山野井は、ロープのブランコの上で、まったく夢を見ずに一時間ほど眠った。」

人間は無酸素で7000メートル以上に5日もいつづけることはできないというのが登山界の常識だった。しかし、いま、山野井夫妻は6日目を迎えようとしていた。
氷壁にハーケンを打つために手袋を脱ぎ、素手で岩肌をさぐる。一本打つたびに1時間ほどかかった。夫妻はこの登山で両手両足の指を凍傷でほとんど失う。死は常に隣り合わせにあった。

絶望的な状況下。壮絶な闘いの結末。
何度読んでも言いしれぬ感動を覚える、ノンフィクションの極北。

私はこの本を読んでからは辛い状況に会うと、自分の辛さなど、山野井夫妻の苦しみに比べれば何のことはないと思うことが習い性になった。その意味では私に大きな影響を与えた一冊である。

 

 回顧を兼ねた書評
 僕の初海外旅行は26歳の時のインドだった。
 当時往復チケットは年末料金だったので30万した(泣)。
 行く前は椎名誠の「わしもインドで考えた」を熟読。
 インドでは尻の毛まで抜かれるほどぼったくられ、下痢と発熱で散々だったけど、
 それからはリーマンパッカーとして主にアジアをふらふら。
 アフリカは遠すぎて行けなかった。新婚旅行もバックパックでバンコクと香港へ。
 香港では雑居房のチョンキンマンションで二泊し、妻はぐったりしていた。
 バンコクでは安宿と高級ホテルと泊まり歩き、マリオットのプールで
 溺死しそうになったのは今ではいい思い出だ(嘘)。
 旅も好きだが、旅行記も好きだ。
 この本は主にアフリカ旅行のエッセイだが、面白い。
 何よりも文章がうまい。
 奥さんとのなりそめを綴った「追いかけてバルセロナ」なんか疾走感があり、
 一気に読め、感動的でさえある。
 朝の通勤の地下鉄で読んでたけど、日本にいながら気持ちはバックパッカー。
 旅の本もいいけど、また出かけたいなあ。