— ドリアン長野 (@duriannagano) 2018年3月2日
太平洋戦争の敗戦から四日後の昭和20年8月19日、南満洲の大虎山飛行場に11人の飛行兵が整列した。彼らは自らを神州不滅特別攻撃隊と称した最後の特攻兵である。
彼らは大本営の戦闘停止と武装解除の降状命令に背き、日本人居留民がソ連軍によって生き地獄に晒されている現状を見るにみかね、戦車隊に体当たりを企だてようとしたのだ。見送りに来ている人々の中に日傘を差した白いワンピース姿の二人の若い女性が飛行機のそばに立っていた。
プロペラが回ると同時にその女性二人が、さっと座席に乗り込んだ。
目撃した人々が「女が乗ったぞ!」と口々に叫んだ。
二人は谷藤徹夫少尉の妻、朝子と大倉巌少尉の恋人、スミ子である。
特攻機に女性を同乗させるということは重大な軍紀違反だ。しかし、当時の日本軍の最大の禁忌を犯して二人の女性を特攻機に乗せたという重い事実、そしてそこまでした彼女たちの心情を歴史の闇に葬ってはいけないと切に願う。純愛、と言っては軽きに過ぎるだろうか。「国敗れて山河なし 生きてかひなき生命なら 死して護国の鬼たらむ」谷藤徹夫の辞世の句