過日用事が済み、次の用事まで一時間あるので飲み物を買おうとハンバーガー屋に行った。ちなみに自分はハンバーガーは食さない。カウンターのメニューを見ていると、半バカ、いやハンバーガーをテイクアウトにしたあんちゃんが自分の前に来て
「邪魔だ、どけよ」とぬかして通り過ぎた。振り返ると、そいつは出口でこちらを睨んでいるので、こっちも睨みつけた。5秒ほど睨み合うと、そいつが
「何だよ、文句あんのか」と言うので、つかつかと寄って、他の客が驚かないように、
「表に出ろ」と低い声で言った。
ローをかましてやろうと思った。フルコン空手やキックボクシング経験者でない限り、ローキックをまともにくらって立っていられる人間など皆無だろう。
駐輪場でそいつが先に手を出しやすいように顔を突きつけてやったが、手を出さない。
「やらへんのか」
そう言うと、そいつは
「こっちから手え出したらパクられるやんけ、ボーッと突っ立っとくなよ」と捨て台詞を吐いて北方面に自転車で去っていったのである。
なんじゃそりゃ
C.W.ニコル氏が空手の黒帯を取るために来日し、松濤館流空手に入門した。師の一人である日本空手協会の主席師範、中山正敏氏と電車を待っていた時のこと。
電車のドアが開き、荒くれた顔つきをした労務者風の男が、わざとその空手の名人にぶつかり、暴言を吐いた。ニコル氏は先生がその無礼な奴にお仕置きをしてやるのを心待ちにしていたところ、先生はただお辞儀をして、かすかに微笑むと、「失礼」と言っただけだった。それから電車に乗り込み、怒っている様子など微塵も見せずに、それまで話していた話題を続けたのだった。愚かなその乱暴者のことなど、先生は毛の先ほども、気にかけていなかったのである。
自分は未熟者だ。
「街中で足を踏んだ、肩が触れた、そうやって喧嘩をふっかけてくる奴は君たちが、すいませんでしたと頭を下げておけばいい。謝って文句を言う奴はいないよ。それでも因縁をふっかけてくるなら、のばしてしまえ。そこでケンカのできない男は駄目だ。何のために空手をやっているんだ。極真は後ろを見せない。しかし君たちが本当に強くなれば、道端でのくだらないケンカはしないもんだ」
大山倍達
押忍
「邪魔だ、どけよ」とぬかして通り過ぎた。振り返ると、そいつは出口でこちらを睨んでいるので、こっちも睨みつけた。5秒ほど睨み合うと、そいつが
「何だよ、文句あんのか」と言うので、つかつかと寄って、他の客が驚かないように、
「表に出ろ」と低い声で言った。
ローをかましてやろうと思った。フルコン空手やキックボクシング経験者でない限り、ローキックをまともにくらって立っていられる人間など皆無だろう。
駐輪場でそいつが先に手を出しやすいように顔を突きつけてやったが、手を出さない。
「やらへんのか」
そう言うと、そいつは
「こっちから手え出したらパクられるやんけ、ボーッと突っ立っとくなよ」と捨て台詞を吐いて北方面に自転車で去っていったのである。
なんじゃそりゃ
C.W.ニコル氏が空手の黒帯を取るために来日し、松濤館流空手に入門した。師の一人である日本空手協会の主席師範、中山正敏氏と電車を待っていた時のこと。
電車のドアが開き、荒くれた顔つきをした労務者風の男が、わざとその空手の名人にぶつかり、暴言を吐いた。ニコル氏は先生がその無礼な奴にお仕置きをしてやるのを心待ちにしていたところ、先生はただお辞儀をして、かすかに微笑むと、「失礼」と言っただけだった。それから電車に乗り込み、怒っている様子など微塵も見せずに、それまで話していた話題を続けたのだった。愚かなその乱暴者のことなど、先生は毛の先ほども、気にかけていなかったのである。
自分は未熟者だ。
「街中で足を踏んだ、肩が触れた、そうやって喧嘩をふっかけてくる奴は君たちが、すいませんでしたと頭を下げておけばいい。謝って文句を言う奴はいないよ。それでも因縁をふっかけてくるなら、のばしてしまえ。そこでケンカのできない男は駄目だ。何のために空手をやっているんだ。極真は後ろを見せない。しかし君たちが本当に強くなれば、道端でのくだらないケンカはしないもんだ」
大山倍達
押忍