#31 インド編 その7(リターンズ)

#31 インド編 その7(リターンズ)
2012-06-01 | Weblog
ベナレスで知り合った人が泊まっているホテルに荷物を置かせてもらっていたので、急いで引き取りに行く。町中でリキシャーに乗り、町外れまで行き、そこからオートリキシャーを雇ったのだが、運転手が飛ばすこと、飛ばすこと。急いでくれるのはありがたいのだが乗っている方は気が気ではない。人波を巧みにかわし、F1レーサーのように車を追い抜き、対向する牛の横をするりと通り抜ける。まったく、生きた心地がしなかったよ、あたしゃ(ここだけちびまるこちゃんの声で読んでね)。
 やっと駅に着いてやれやれと思っていたら、駐車しようとする寸前に横から二人乗りの自転車が突っ込んできた。私は後ろの座席であるはずのないブレーキを思いっきり踏んだが、やっぱりぶつかった。自転車は派手に横転したが、男たちに大したケガはなかったらしく、起き上がると猛然と食って掛かってきた。それに運転手が応戦する。回りには野次馬が集まってきた。こういう場合、インド人は激しく罵り合っても手は出さない
(警官が民衆を警棒でどついている光景は時々見る)。インド人と中国人は似ているような気がする。どちらの国も人口が多いので自分を主張しないとやっていけない。謙譲の美徳なんて言っていたらバスにも乗れないし、列車のチケットも買えないのだ。そんな生存競争が激しい国では自然と気性が荒くなるのか、しょっちゅう言い争いをしている。そうやってケンカになるとわらわらと人が集まってきて見物を始める。誰も仲裁はしない。大学の時の先生が言っていた。中国からの留学生が日本に来て不思議に思うのは、街を歩いていても電車に乗っていても日本人がとても穏やかでケンカをしないことなのだそうだ。インド人だってそう思っているのに違いない。しかし、私に言わせればケンカばっかりしているあんたたちの方がよっぽっど不思議だぞ。とにかく座席にリキシャー代を置いて、ケンカをしている二人を尻目に駅へと急ぐ。
 プラットホームには日本人の団体客がいた。五才くらいの女の子が彼等に「バクシーシ」と手を出す。そこにいた若者たちがこう言っていた。「お金ないんだよ。ノー・マネー。わかる?」 「逆にこっちから『バクシーシ』って言ってみればいいんじゃないの」 「そうか、ほら、バクシーシ」 日本人に手を出された女の子はきょとんとしていた。むき~っ! 今でもこの光景を思い出すと腹が立つ。その子は好きで物乞いしてんじゃねーよ。貧しくて働きたくても働けねーから仕方なくやってんじゃねーか。そうやってインドまで遊びに来ている金持ちの日本人(私もだけどよ)がいたいけな子供をからかうんじゃねーよ。金をやるつもりがないんなら、断るか無視すればすむことだろーが、あほんだらっ! と憤慨していると一人の少年が私にお金を乞い始めた。歩き出してもしつこくついて来て、私の靴に額をこすりつけてくる。とうとう根負けして某かのお金を与えた。するとその少年は仲間のところへ戻り、ひそひそと話をしていたかと思うと五、六人がこちらに突進してきた。あわてて逃げ出す。そういえば列車が駅に着き、乗客が降りると子供たちが一斉に乗り込んできた。何をするんだと見ていると、ゴミ箱や座席の下からペットボトルを拾い集めている。そして構内にある水道の蛇口からペットボトルに水を入れてキャップを閉めているのだ。誰に売りつけるんや~? と考えるとはたと思いつくことがあった。中級のホテルに泊まっていて、ミネラルウオーターを頼んだ。ボーイが持って来たボトルには明らかに水が7分目ほどしか入っていない。もちろんキャップは開けた跡がある。こいつの中身は駅の水道水やないかいっ?! 責任者、出てこいっ!(by 人生幸朗師匠)
 こういう風にインドのガキどもは毎日を逞しく生きてゆくのであった。幼少のみぎりから鍛えられているんで、斯くの如く冷酷で抜け目のないインド商人に成長していくのもむべなるかな。合掌。(つづく)
 元(ハジメ)管理人の感想文と皆様への伝達事項
 日本だと保険並びに法整備が整っているから基本的には事故の言い争いは少ないです。しかし、実際に交通事故が発生し示談がこじれた結果、加害者が指名手配されている前例は日本国内でも存在しています。
 日本人観光客がインド人の女の子に金を請求したのは正しい行動だと思える位にインドではいい加減な人間が多いと考えているインド旅行の被害者もいるかもしれませんが、本当に困っている子供達は助けた方が良いとは思います。日本でも宅配ピザを頼んだら玄関前の通りで遊んでいた子供達が届けられたピザの搾取をしようとしていました。日本人で裕福なのにピラニアみたいな子供達には何もプレゼントしないのが教育です。
 気づいた時には日本人も錯乱していたり善悪の判断が行えない人が増加していますね。傲岸不遜な人物がいて、羞恥心があるのか無いのかは不明だがちゃんとした説明もなしに「娘が寡婦だから生活費を支払ってもらえる。」と勘違いしてた人がいてその人物が私に対して不条理な行動を取った事から支払い拒否を伝達したら泣きながら逆上し「何てことを言うんだ。」と言われて人の善意につけこむから気分を害した前例もございました。乏しくても説明責任は存在すると私は思います。案外、彼等一家は毎日ステーキでも食べてるのかもしれません。言い換えると「彼等一家は全く乏しくない。」から説明拒否をしたのでしょう。
 日本は、諸外国からカルトがサリンを作るまで放置したのがおかしいと考えられていたり、2011年3月11日の福島原発の事故の後処理等で常識が疑われています。だから、複数の海外の企業が日本にやってきた。後処理の仕方が悪かったからです。すでに発表されてますが、チェルノブイリよりも福島県の方が悪い状態だそうです。インドは平成10年代に核武装した国へと変貌したのでこれから国内の貧困層を抱えながらも核戦争に突入するやもしれません。
 世界的に水不足は深刻で日本国内の河川で海生生物が発見されているのは河川の水量が激減して海が内陸部に上がってきているからだそうです。お水は水質並びに水量にも気を配る必要がございます。
 次回のドリアン長野の海外旅行記(リターンズ)にご期待ください。
 

 回顧を兼ねた書評
 僕の初海外旅行は26歳の時のインドだった。
 当時往復チケットは年末料金だったので30万した(泣)。
 行く前は椎名誠の「わしもインドで考えた」を熟読。
 インドでは尻の毛まで抜かれるほどぼったくられ、下痢と発熱で散々だったけど、
 それからはリーマンパッカーとして主にアジアをふらふら。
 アフリカは遠すぎて行けなかった。新婚旅行もバックパックでバンコクと香港へ。
 香港では雑居房のチョンキンマンションで二泊し、妻はぐったりしていた。
 バンコクでは安宿と高級ホテルと泊まり歩き、マリオットのプールで
 溺死しそうになったのは今ではいい思い出だ(嘘)。
 旅も好きだが、旅行記も好きだ。
 この本は主にアフリカ旅行のエッセイだが、面白い。
 何よりも文章がうまい。
 奥さんとのなりそめを綴った「追いかけてバルセロナ」なんか疾走感があり、
 一気に読め、感動的でさえある。
 朝の通勤の地下鉄で読んでたけど、日本にいながら気持ちはバックパッカー。
 旅の本もいいけど、また出かけたいなあ。