書評 平成28年8月

「ドアーズ」のファーストアルバムのライナーノーツにこんな言葉があったのを今でも覚えている。「もしあなたがドアーズを聴いたことがないというなら、あなたは人生で大切なものを失っているのに違いない」。
竹宮恵子風と木の詩」、萩尾望都トーマの心臓」を読んでいなかったら…
寺山修司は当時、「これからのコミックは『風と木の詩』以前.以後という呼び方で、変わってゆくことだろう」と言った。
後に大泉サロンと呼ばれる、練馬区大泉の長屋で共同生活をする竹宮恵子萩尾望都。まるでジョンとポールのような奇跡的な邂逅、そして別離。
少女マンガのタブーを打ち破るために努力を続け、着想から6年目でやっと掲載された「風と木の詩」。 
京都精華大学教授であった(現在は学長)彼女の言う、「教えるというのは、その人に気付いてもらうということだ。これはマンガも一緒だと思う。自分が描いているマンガが面白いということを、読者が発見したかのように描く。」は非常に示唆に富む言葉だと思う。

 

 回顧を兼ねた書評
 僕の初海外旅行は26歳の時のインドだった。
 当時往復チケットは年末料金だったので30万した(泣)。
 行く前は椎名誠の「わしもインドで考えた」を熟読。
 インドでは尻の毛まで抜かれるほどぼったくられ、下痢と発熱で散々だったけど、
 それからはリーマンパッカーとして主にアジアをふらふら。
 アフリカは遠すぎて行けなかった。新婚旅行もバックパックでバンコクと香港へ。
 香港では雑居房のチョンキンマンションで二泊し、妻はぐったりしていた。
 バンコクでは安宿と高級ホテルと泊まり歩き、マリオットのプールで
 溺死しそうになったのは今ではいい思い出だ(嘘)。
 旅も好きだが、旅行記も好きだ。
 この本は主にアフリカ旅行のエッセイだが、面白い。
 何よりも文章がうまい。
 奥さんとのなりそめを綴った「追いかけてバルセロナ」なんか疾走感があり、
 一気に読め、感動的でさえある。
 朝の通勤の地下鉄で読んでたけど、日本にいながら気持ちはバックパッカー。
 旅の本もいいけど、また出かけたいなあ。