#48 チョンキンの夜は更けて (リターンズ)

#48 チョンキンの夜は更けて (リターンズ)
2013-06-01 | Weblog
NO48 チョンキンの夜は更けて

at 2004 06/25 22:25 編集

「300だ」
「高いな。他の商品はないのか」
「いくらなら買う?」
「いや、他の商品はないかって聞いてるんだ」
男がファイルされたルーズリーフをせわし気にめくる。6畳くらいの部屋には壁に向かって作業机が並んでいて、時計の部品が無造作に散らばっている。それを少年が熱心に組み立てている。
ここはチョンキンから100メートルほど離れたミラドール・マンション一階にある工房だ。ミラドールもチョンキン同様、安宿の集合ビルだが、新しい分だけ設備が整っているらしい。話のネタにと、ニセ・ブランド時計の客引きに声を掛けたら、ここに連れてこられた。さきほど連れてこられた二人の中年の白人女性たちも隣の席でルーズリーフの写真を見せられている。
「男物はロレックスだけだ。ブルガリもあるが、これは女物だけだ」
ロレックスは言っちゃあ悪いが、成り金オヤジの趣味だ。まるっきりイケてない。ちなみに私は腕時計は持ってない。ケータイの時間表示で充分だし、海外に行くときは電池で動く、ちっこい目覚まし時計を持って行く。
「この時計イケてねー」「もっと安くしろー」と散々ごねる私にとうとうキレたのか、「あんたの欲しい時計なら外で売っている」と通りに追い出された。仕方ないから、露店で売ってる一個30HKDの時計を買ったね。それにしても、あんなに簡単に客を手放すってことは一日に何人もの客が食いついてくるってことか? それに時計が一個売れれば、客引きと実際に売りつける男にそれぞれ、いくら入ってくるのだ? ああ、知りたい。
チョンキン内にあるインディアン・フード・ショップで頼まれていたカレーの材料を買ったんだけど、久々に頭にきたね。買い物の品を抱えてレジに持っていき、精算した時に持ち合わせが少ないことに気づいた。「両替えしてくるから」と店を出て、近くの両替店で両替して戻ってきた。「えーっと、いくらだっけ?」と店のオヤジに聞くと、「199(HKD)だ」と言うので払って出てきた。近くの通りにある「スタバ」でぼーっとしていると、はっとした。待てよ、199いうたら、めちゃめちゃ高くないか? あわててレシートを確かめてみると、99HKDになっとるやんけ。あーっ! やられたーっ! 100ぼられたやんけーっ!けど、 わっかっとる、悪いのはこのおれやあっ。おれがあほやったんやあー。騙されたんが悪いんや。今からその店にねじりこみに行ってもレシートに書いてあるさかい、どもならんわ。しかし、腹立つからその店の名を書いておこう。チョンキン二階にある「マハラジャ・プロビジョン・ストア」だ。オヤジのインド人は大きいことはできなさそうな、小ずるくて小心者の貧相で女には絶対もてそうもない顔やったでー(小学生か)。
ここで気を取り直して、チョンキンにあるお勧めのレストランを書いておこう。D座には「アフリカン・サービス・センター」という一室がある。理髪をしたり、アフリカ料理を食べさせたりするらしいが、入ったことはない。なんせ、外観は他の安宿と変わりなく、秘密クラブのような雰囲気だ。今度、安宿に泊まってるアフリカ人に連れてってもらうことにして、私のお勧めは三階にある「エベレスト・クラブ」。ここのシェフは一流ホテルで修行していたそうで、ビーフカレーも自慢のノビリティアン・ビリヤーニもとても上品な味だ。内装もゆったりと落ち着いていて、チョンキンにいることを忘れてしまうほどだ。チョンキンには何軒かインド・レストランが入っているが、味と値段の安さを比べてみるとここが断トツだと思う。ネパール人マネージャー、メゲンドラ君が言うには、「日本人もよく来てくれる。香港に住んでいる日本人でここを知らない人はいない」んだそうだ。彼は日本に行ったとき写真を撮りまくり、400枚もの現像を頼んでカメラ屋のおやじをびっくりさせたというほどの大の親日家だ。だけどメゲンドラ君、日本のことを夢中で話す君の話を聞いてたら、もうちょっとで帰りの空港行きのバスに乗り遅れるとこやったで。それに10%割引きのメンバーズカードをくれたんはありがとうやけど、今度いつ使えるか分からんで。ひょっとしたら、使われへんかもしれへんでー。

元(ハジメ)管理人の感想文と皆様への伝達事項

実に、平成十年代らしい海外旅行記です。平成十年代は携帯電話が普及した年代です。歯車を販売する企業の社長がテレビ番組に出演した時にも「時計向けの製品の売り上げが下がった。」と嘆いてました。おつりの間違いは日本でもあって私が京都市内の○ァミリーマートでも¥50足りないお釣りの時があってそれ以降は京都市内のファミリーマー○にはほとんど行かなくなりました。皆様、物品の購入の時にはどこであっても気をつけましょう。日本も安心出来なくなりました。他にも、供給する商品が欠落してるのは詐欺行為に思えます。冷やかしが目的で優柔不断な姿勢を継続すると店員が怒るのは世界中どこでも変わらないようです。だけど、強要は日本では違法です。通販業者のamazon.comが年間で7000億円以上の売り上げを作ったのはどういうことかを考える必要が日本の小売業者にはありますね。
アフリカ料理ですがかつて私の地元でアフリカ料理店が営業してたのでドリアン長野にプレゼントしたことがあって彼は喜んで食べてました。エボラウイルスで有名なアフリカのコンゴ民主共和国で製造されたトマトソースで味付けされた料理はおいしかったですね。日本でもすでに中京の某霊長類研究所でエボラウイルスに感染した猿達が多数死んでいたのは常識です。エボラウイルスも焼却処分には弱いから問題は無いと私は考えてます。最近はエボラウイルスは沈静化したみたいですね。
エベレストクラブは本当に評判が良いレストランのようです。今となっては、デジカメの時代になって画像データをメールで送信する時代になりました。平成20年代であってもアナログな人には今でも写真を郵送するのでしょうか?店員さんが親切なのは良いと思います。だけど、何らかの時間については理解した上で行動を取らないと帰国が困難になるので皆様も万が一、海外旅行に行かれたら自己主張はしましょう。そういえば、日本国内であっても店側から配布されたクーポン券って使用しないことが多いですよね?無論、人によっては頻繁に使用するクーポン券の存在については否定しません。
日本とは全く違う海外の二種類(ミラドールとチョンキン)の建物だけでこれだけ楽しめる所は少ないと考えられます。 あべのハルカスは別かも? 再び消費税が増税された後(8%から10%)では多くの日本人が生活必需品しか購入しなくなると小売業者にとっては冬の時代が来るとも言われてます。 最後になりましたが、平成十年代は日本人がお気楽な旅行が行えた最後の年代になる恐れがございます。
来月も、お楽しみに。 以上、管理人元(ハジメ)でした。
オマケ
HKDとはホンコンドルの略称です。念のため。
 

 回顧を兼ねた書評
 僕の初海外旅行は26歳の時のインドだった。
 当時往復チケットは年末料金だったので30万した(泣)。
 行く前は椎名誠の「わしもインドで考えた」を熟読。
 インドでは尻の毛まで抜かれるほどぼったくられ、下痢と発熱で散々だったけど、
 それからはリーマンパッカーとして主にアジアをふらふら。
 アフリカは遠すぎて行けなかった。新婚旅行もバックパックでバンコクと香港へ。
 香港では雑居房のチョンキンマンションで二泊し、妻はぐったりしていた。
 バンコクでは安宿と高級ホテルと泊まり歩き、マリオットのプールで
 溺死しそうになったのは今ではいい思い出だ(嘘)。
 旅も好きだが、旅行記も好きだ。
 この本は主にアフリカ旅行のエッセイだが、面白い。
 何よりも文章がうまい。
 奥さんとのなりそめを綴った「追いかけてバルセロナ」なんか疾走感があり、
 一気に読め、感動的でさえある。
 朝の通勤の地下鉄で読んでたけど、日本にいながら気持ちはバックパッカー。
 旅の本もいいけど、また出かけたいなあ。