「ドリアン長野のランニングな日々」⑤
タイムではなく、完走するためにセーブしていた力を徐々に解放していく。
前にいるランナーを次々と抜いていく。抜こうという意識は毛頭ない。ただ普段の練習で走っているペースを出すだけだ。坂道では歩いているランナーが多くいる。その脇をゆっくりと走り抜ける。30キロ地点まで来た。二週間前の練習ではふくらはぎの痛みで30キロでリタイアしたが、毎日のカーフレイズのおかげで痛みはない。確信した、完走できる。しかし32キロからが苦しかった。苦しみに耐え、37キロまで来た。あと5キロもあるのか。わずか5キロが永遠の道のりに思える。もう歩いてしまおうか。ここまでよく頑張ったじゃないか。
いや、娘が言った「負けるなよ」という言葉を思い出す。負けるなよ、というのは自分に負けるなという言葉ではないのか。
ここで歩いたら自分に負けるような気がする。「負けるなよ」心の中で何度もつぶやく。「負けるなよ、負けるなよ」
40キロ到達。あと2キロか。もう500人以上のランナーを抜いている。それでもゴールは遠い。目の前には1キロ先までランナーが数珠つなぎになって走っている。その先はカーブになっていてゴールが見えない。
フルマラソンとはなんと過酷な競技か。
ゴールの見える直接距離まで来た。ゆるい坂道になっている。最後に力を振り絞る。本当に心臓が止まると思った。坂道を駆け上がり、何人かを抜いた。もう走らなくていい。ゴール。
タイムは二年前よりわずか2分早かった4時間57分。あんなに頑張って2分か。でも気分は最高だ。
ざまあみろ、自分に負けなかったぞ!と叫びたいくらいだ。
義弟も今大会に出場し、大学時代に陸上を始めて21年目、3時間57分の初のサブフォー達成だ。
今大会で川内三兄弟の鮮輝選手が優勝。これで歴代の福知山マラソンで三兄弟が全員優勝の偉業を達成した。
ありがとうございます😊
あの言葉がなかったら5時間超えてたかもしれません。^^;
太腿筋にかなり来てます。